一般社団法人ネクストステップ研究会

地域ESD活動推進拠点

「空き家が増え続けると どうなるの?」【第0回 開催報告】

>>> 第0回~第3回の事業全体の報告書(PDFファイル)はこちらをご覧ください。

市民協働の担い手育成・連携強化等に関する協働事業
 「空き家が増え続けると どうなるの?」講座
第 0 回【円卓会議】開催報告

日 時:平成30年9月18日(火) 18時半~21時
場 所:四日市市なやプラザ
参加者:23名
挨 拶:中根 市民協働安全課長(市民協働の意義・目的の説明)、
    寺田当会代表(大人の ESD・昨年の市民協働事業からの展開・企画会議)

目的
 行政と専門家の問題共有と講座企画・関係 強化のために行う。各自の現場で顕在化して いる課題や事例を通して、「市民に知ってほ しい・気づいてほしいこと」を発表してもらい、事業全体のテーマの選定や登壇者の人選 を行う。フランクな場として、それぞれが知 り合い、連携(つながり)のきっかけとする。
会議の流れ
 空き家問題について、当会が問題提起を行 い、参加者それぞれの現場で表面化している 問題を聞かせていただいた。
その後、質問タイムを設け、付箋とシートを 利用して多方面から議論を行い、本事業の全 体像を形作っていった。 出席者同士が交流できた。

円卓会議の様子 円卓会議の様子

円卓着席者の自己紹介
【専門家】
・橋本俊雄さん(特定行政書士 マンション管理士)
  四日市市在住、諏訪栄の神社の隣で事務所をやっている。集合住宅の空き家問題も深刻。
・岡本綾さん(行政書士 上級終活カウンセラー)
  鈴鹿で行政書士をしている。四日市市民。終活カウンセラー協会:上級インストラクター
・篠原一志さん(特定行政書士)
  職住四日市、ぶどうの木 篠原行政書士事務所。市民協働に賛同。 ・三沢圭さん(行政書士) 元四日市市職員で現在は行政書士。今日は知った顔がいくつもあって驚いている。
・松平紳太郎さん(リユースショップ モノマニアグループ代表取締役)
  桑名市在住。四日市市内に 3 店舗展開。終活や老両親の持ち物の買い取り等協力ができると思う。
・須藤有紀さん(整理収納アドバイザー)
  内部地区在住、日々の業務で暮らしを見ている。二人の子どもがいる。
・伊世利子さん(明日の地域医療を考える住民の会 あした葉代表)
 川島に住んでいる。在宅フェアなど四日市市で様々な医療・福祉イベントを行っている。
・佐野正和さん(教育機関 三重県環境学習情報センター所長)
→円卓会議の日程変更(台風で順延)したため出席が叶わず
【専門家】
都市計画課【利活用に関すること】 2名
生活環境課【ごみ減量・立木等に関すること】 1名
資産税課【固定資産税に関すること】 1名
市民協働安全課【防犯に関すること】 中根敏夫さん、後藤慎也さん
建築指導課【管理不全に関すること】
→円卓会議の日程変更(台風で順延)したため出席が叶わず、資料提供にて参加
【ネクスト】
代表:寺田卓二、企画:福島典子、荒木正俊、他運営メンバー・協力メンバー

参加者の発言内容(一部抜粋、発言順)
(1) 行政各課
市民協働安全課

 今夜は 5 名全員で参加している。空き家増加のテーマの設定によって、関連のある事業者と行政が集 まって解決のヒントを得たい。連続講座の初回である。今後の講座へも参加を望む。
都市計画課
 平成 28 年度から空き家バンクを行っているが、空き家が出てこない。二年半で累計 22 件。 家の中に仏壇があったり、荷物があったりとなかなか進まない。他の市町村と違って不動産業者の仲介 なので契約件数はいいのだが、物件が市場に出てこないと感じている。空き家の将来の推計は出してい ない。現状は把握している。四日市市住み替え支援事業の紹介。空き家等の地域課題は話し合える普段 からのベースが必要
資産税課
 課税に関しては、単に空き家になっただけでは変化が現れない。家を壊すと固定資産税の住宅用地特 例が受けられなくなるため、空き家になってもそのまま置いておくことが多いようだ。所有者不明の不 動産からは税金を回収できない。昨年は 25 件に対し公示送達を行った。5 年の時効を迎えれば税金は 徴収できなくなる状態である。
生活環境課
 空き家に関するごみ増えている。年間 100 件ほど問い合わせ等に対応している(氷山の一角)。子ど も世代から「実家の片付けをして、ごみを持ち込みたい」という問い合わせがある。市外から来て土日 に片付けている。一回 1 トンくらい捨てていく。空き家を自分で解体している市民も出現している。自 分で壊せば一般廃棄物として市に持ち込むことができるため解体費用を抑えられる。住宅地拡大でごみ 収集の範囲が広くなっている。山奥でも回収に行かなくてはならない。
建築指導課(資料での参加)
【空き家等の適正管理に関する対応件数について】
同課では空き家等における適正な維持管理に関して所有者への助言、指導を行っており、対応件数と しては下記の通り。
対応件数:平成 27 年度 334 件、平成 28 年度 265 件、平成 29 年度 331 件 解体等により管理不全な状態が解消した件数:平成 27 年度 43 件、平成 28 年度 60 件、平成 29 年度 68 件
(2)専門家
行政書士(マンション管理士)の橋本さん

 古い団地の空き家問題が、より深刻になるだろう。解 決できなかった事例がある。まず町に人がいない、住んでいる人に覇気もない。70.80 代が増えている。役員のなり手がない。集合住宅の場合、管理組合を作って予算を組んで…と、やって いかなきゃいけないのに、うまくいってない。変な人もいて、そういう人が場を牛耳ったりしている。 高齢者は言い返せない。団地内のパワハラ。全体として活力が落ちているので声が大きい人の意見や都 合にコミュニティ全体が左右されてしまうこともある。
 マンション住民、全国的に高齢化している。維持修繕にお金がかかるが逆行して管理費も下がってい る(回収困難)。よって、建物は傷み始める→資産価値が下がる→売りたくても売れない。四日市でも起こり始めている。一軒家と違う問題がある。解体も難しい。前進のためには、まず住民同士の合意形成 が必要、資金も必要。人付き合いが面倒で集合住宅を選択している住民もおり、話し合うこと自体ハー ドルが高い。高齢者が多くなると金融機関もお金を貸さない。となると住み続けるしかない。建物と人、 両方が老朽化、若い人は寄り付かなくなる悪循環はじまる。
行政書士の篠原さん
 空き家が増えると無法地帯になる。空き家は所有権がかかっている。他人が入ったら不法侵入。犯罪 者がどこに逃げ込むかというと空き家・空き地。警察も勝手に入れない。令状が必要。だから外から見 るだけ。見えないところに隠れていれば犯罪者は安心。 空き家対策特別措置法…空き家の所有者 努力義務。義務を怠っても何も罰則がない。行政が何とかし てくれると思っている人が多いが、一人一人が何とかしようと思わないと解決しない。小さい子どもが 事件にあう。空き家問題は若い世代にも聞いて(知って)ほしい。
行政書士の三沢さん
 空き家相談会、相談者は高齢者が多く、相続回避の相談が多い。「もらったところで…使わない・売れ ない」田んぼや古い家、相続した不動産はいっぱいあるが、どう利用するか難しい。権利を移すのも大 変。山奥の田んぼを相続して、誰がどう管理するか?物理的にも難しい。もらった古家には先祖のもの がいっぱい!仏壇とか処分できないものもある。日本人は新しいもの好き、中古物件を買ったりしない。 新しく開拓して建てたいという気持ちがあるのでは?日本人の慣習や感覚が変わらないと空き家は減 らない。
リユースショップ経営の松平さん
 店舗は四日市にも構えているが生まれ育ちは桑名の旧市街、商店街が 3 日と 8 日に市をやっている。 住居兼店舗。八百屋も空き家だが、商店街は古いけど入りたい人が多い。なぜなら商店街には集客力が 高いから。山の方にある空き家と感覚が違う。そもそも空き家自体に金銭的な価値がない。「売る」とい う発想は難しい。古民家で何かするというニーズはある。老朽化した空き家、台風等の自然災害時の心 配材料になる。個人の財産であっても行政がなんとかしないと歯止めがきかない。
地域医療を考える住民の会の伊世さん
 病院から在宅の流れ、四日市市は在宅看取り 18%とレベルの高い地域。介護保険もいろいろあるが空 き家が増えていく構図はよくわかる。空き家利用でやりたいのはホスピス「お母さんの家」宮崎県でや っている。7~8 人で住むグループホーム。昨年は四日市に講師を呼んで、考えたりもしている。ボラン ティアで空き家を使ってもいる。使える空き家を、どうやって使っていくか。建物をきれいにして、どう使っていくか。
整理収納アドバイザーの須藤さん
 最近の事例、ご自宅以外に空き家を持っていて、今の家の不要なものを空き家に持って行っている。 その方はそれに疑問を持っておらず、ごみに出すより簡単と思っている。その方が亡くなったらモノに 溢れた家が 2 軒出る。モノを捨てることばっかりに世の中がなっている。入ってきたものをどうしたら いいのか分かっていない。モノの入れ方が分かっていないからモノが詰まるばかり。
空き家問題は小学生の娘もいるので連れ込みが怖い。危険性に住民が気付いていない。地域の問題とし て、みんなで考えていくためにも情報のシェアが必要。

ブレーンストーミング
皆さんの手元には付箋を用意した。会議中に啓発キーワードを記入していただき、(自分の持っている疑問や課題も記入可とした)会議の後半に付箋のグループ分けを行った。以下は参加者全員の付箋から見えてくる啓発キーワードと、その内容。
「啓発キーワード」
① 空き家との関わり方
② コミュニティの課題
③ 実家の片付け・自分の片付け
④ 相続のこと
⑤ 空き家の利活用
⑥ 心の持ち方・心構え
⑦ 住宅政策・法律

ブレーンストーミングの様子 ホワイトボード

啓発内容
① 空き家との関わり
空き家増加が何をもたらすのか?世代によって知りたいこと・心配事は違うが、不安感を持っているの は同じ。すなわち、この課題は多世代に広く影響するということに他ならない。
・自分に何が関係しているか?
・自分の住む町に置き換えないと身近に感じられない(理解しづらい)
・空き家問題の広報の難しさ、市民への広報の手段、関心を向上させる
・行政の限界・協働の必要性
・個人のメリット、デメリット明確に…他
② コミュニティの課題
空き家が増加することで町の在り方が刻々と変化していく。安心安全なまちづくりには、コミュニティ力が必要。
・空き家情報・各地区(自分の住むまち)の空き家数等、明確にしてほしい
・地域ごとにある危険度(通学路の空き家等)知りたい
・若い人への啓発(家を建てるリスク・ローン等も)
・インフラ(公共施設)の大更新期、維持困難の時期と重なる
・集合住宅(分譲マンション等)の管理不全、老朽化拡大、資産低下
・小家族化、単身化が進むと起こること、人口減少が地域にもたらすこと
・防災の観念も含めたまちづくり…他
③ 実家の片付け・自分の片付け
片付けをブームとして捉えず、「シンプル」な生活スタイルのきっかけにし、継続していくことが大事。 自分の持ち物(資産を含む)の行く末を考えながら年齢を重ねていく。
・頑固な親の説得、実家の片付け
・親の家が空き家になるリスク、自分の家が空き家になる前にしておくこと
・認知症の増加(ごみ屋敷化しやすい)
・ごみの捨て方(不要品の処分の仕方、ごみの分別だけではなく)…他
④ 相続のこと
一般人にとっては難解な法律についても「知る」「学ぶ」機会を増やし、自分の決断と行動がまちづくり や法律・税制にも影響していることへの理解を深める。
・相続手続きの重要性
・空き家相続の具体的な手続きや手順
・登記の負担感(経済的な負担も)、相続手続き難しすぎる
・税負担していることと相続できていることとはイコールではない(勘違いしないこと)…他
⑤ 空き家の利活用
空き家を「お荷物」ではなく、「地域の資源」へと変身させる。人が十分に住める・利用できる空き家は どんどん利用していく。
・売れる中古住宅は?(どんな中古住宅なら売れる?)
・空き家で儲けられないか?の発想も必要
・リフォーム、リノベーションの魅力アップ
・大学生が住む(家主と学生の人間関係もできる)…他
⑥ 心の持ち方・心構え
逝く人と、これからを生きる人、それぞれがそれぞれを思いやることができる親子関係やコミュニティ に。自分の家やコミュニティで、どう逝くのか考える機会が必要。
・終活、リビングノート(自分のあとのことを考える・整理する大切さ)
・老後の暮らし方を考える機会を(看取りの場所の問いかけ)、高齢者を見守る若い世代の意識も大事
・地域コミュニティを築く(実際に機能するコミュニティ)
・自治体におんぶにだっこ、どこまで頼れる?(税金の投入どこまで?)…他
⑦ 住宅政策・法律
利用価値が低い不動産の相続には負担があるばかりの現状は、どう進化するべきか?根底には日本の土地制度がありそうだ。人口増加時代に作られた住宅政策を人口急減スタイルに早急に変える必要がある。
・住宅ローン減税が新築ニーズを助長している
・固定資産税優遇が危険家屋の放置に繋がっている
・危険家屋の代執行の求償の課題(費用をどう賄う?)
・所有権の強さ、権利(人権)の問題
・不動産の流動性が低い
・公営住宅の供給不足…他

これらの参加者の意見・疑問をもとに、事業全体の啓発内容を決めていった。第 1 回のリレー講座の中身にも反映する。