一般社団法人ネクストステップ研究会

地域ESD活動推進拠点

「空き家が増え続けると どうなるの?」【第2回 開催報告】


市民協働の担い手育成・連携強化等に関する協働事業
 「空き家が増え続けると どうなるの?」講座
第2回【バス視察】開催報告

日 時:平成30年12月7日(金) 9時~16時
集 合:市民噴水前(博物館前広場)
参加者:26名
目 的:課題のある現場や先進的な取り組みを見学することで自分事として空き家問題・対策を捉えることができる市民を増やす。午前と午後に二か所の視察を行う。課題への理解を深めるために第0回の円 卓会議の参加者、第1回の参加者から優先募集し、残席を一般募集した。

視察先① 東海市役所(10:15 ~ 11:50)
東海市ご担当者:東海市建築住宅空家対策グループ
        都市建設部建築住宅課 統括主幹:石濱彰洋さん、統括主任:江口卓さん
講座内容
(1)東海市市勢概要
・来年市制 50 周年、人口 115 千人(増加基調)、面積 43 平方キロ
・製鉄業を中心とした産業都市、ランなどの近郊農業も盛ん、セントレアに近く交通の要衝
(2)東海市の空家対策
①取組みの経緯
平成 25 年 8 月空き家対策検討委員会設置、以降 4 回開催後 27 年 11 月「空家実態調査」実施、28年建築住宅課に空家対策グループ設置、空家等対策推進委員会に改変、空家等対策推進委員会設置
②空家実態調査
・対象は市全域約 5 万戸、机上調査・現地調査・損傷調査を実施
・その結果、空家は市内全域に分布、空家になったきっかけは 1 位相続、2 位転居、3 位長期不在で高齢化が契機であることを確認
③東海市空家等対策計画(平成 29 年 3 月)
基本的な方針は、
・空家前…空家化予防対策
・空家後…維持管理促進対策、活用促進対策、除却・跡地利用促進対策
・管理不全になった…解消対策
④実施した主な対策
・維持管理促進対策:空家管理サービス(シルバー人材センター)空家対策事業者情報提供(東海商工会議所)
・利活用促進対策:空家バンク(愛知県住宅建物取引業協会連携)空家相談窓口開設、マイホーム借上げ制度
・空き家問題啓発:セミナー(愛知県住宅建物取引業協会、愛知県司法書士会)
(3)庁内連携~ワンストップ空家相談窓口~
空家は「大切な財産で資源」との認識で取組み、ワンストップ窓口は空家の苦情・相談をたらい回しにせず相談に沿って対応し、空家等対策推進委員会は苦情・相談等についての進行管理を行う
①ワンストップ円滑実施のために
・各課の役割を明確に(空家等対策計画に明記)
・意義と流れを明確に(目指すのは問題解決との共通認識)
・窓口確認事項を明確に(できないことがある)
②進行管理が大切
【フロー】 建築住宅課が一元管理
苦情相談(建築住宅課)→ 割振り(関係各課) → 市民への対応(関係各課) → 建築住宅課へ報告
講座中の江口さん
「ワンストップ相談を実施するメリット」
〇市民には相談窓口が一本化されていることは、シンプルでわかりやすい→相談しやすい
〇空家の苦情・相談の情報が集約されるため、管理しやすい
「ワンストップ相談を実施する上での注意点」
苦労したことルールと責任を明確にすることが大切反省点
相談内容によっては、対応出来ないものがある。
各課のルールを明確にして、出来ないことをしっかり伝える切実さ
進行管理するために、窓口担当の空家問題解決への意識が必須
↓↓↓
行政担当も人が入れ替わっていく
10 年先、もっと先「空家が減っている状態」であるか把握し続ける必要がある

講座中の江口さん 講座の様子

(4)空家解決事例
・長年の相続放置で多数の相続人がいた例、大量ゴミかつ十数年間所有者に会えなかった例の解説
・所有者と会って話をすることは解決への効果的な手段である
・今後は「相続人が不在の空家」が問題
(5)質疑応答
・空家バンクにおける宅建協会の参画(A:フロー図)、空家バンクの実績(A:登録 2 件、売却 1 件、交渉中 11 件)、20 年後の空家見通し(A:見通せず)について質問あり
・市側の悩みとして、個人情報の取り扱い、新築重視政策や固定資産などの税制等について補足説明あり

視察先② 街かどサロンかめとも(12:30 ~ 15:00)
半田市亀崎町 亀崎まちおこしの会理事・運営委員長 石川正喜さん
       同会の会員 市川大輔さん(建築家)
講座内容
(1)昼食のふるまい・ご挨拶
石川様ごあいさつ 亀崎は「文化」でまちおこしを行っている。
何をおいてもやるという人がいることが必須条件。
何もないというところはない。
とにかく「文化」を掘り起こすことが大切。
(右写真:石川様ごあいさつ)
(2)「亀崎空家再生プロジェクト」について
・亀崎は海と小高い山に挟まれた地形。亀崎の魅力はこのような地形だったからこそ、開発行為が行われず古い建物や狭い路地が残り、「潮干祭」のような伝統文化の継承が行われている。すべてはつながっている。
・昔から亀崎は海と生活が一体だった。まちのすぐ下に砂浜があり、また亀崎港は市場があってとても賑わった。しかし伊勢湾台風のあと眼前の海の埋立や築堤が行われて海が遠のいてしまった。潮干祭の山車も海に入れなくなったが、現在は平成 5 年に人工の砂浜が造られ祭事(曳下ろし)も行われている。
・亀崎のまちなみの特長は、丘の上から眺められる「いらかの波」と、仲町通りの二階建て、切妻、欄干、付け庇などの特徴を備えた「町家」、「せこ」と呼ばれる細い路地。
・緊急車両が入れない、自家用車が家の近くに駐車できない、近所付き合いが煩わしい、家の建て替えが困難など、現代の生活にマッチしない「都市構造」であるため空き家は増加しているが、それ自体がまちの資源ではないのかと考えた。

空き家 空き家を活用することで
①所有者にとっては「お金を生み出す資源」となり、
②利用者(借主)にとっては「無駄な出費を省ける」、
③街にとっては新しい「人」を呼び込み、新しい「使い方」が生まれることで賑わいが増す。

・2013 年2月に特定 NPO 法人「亀崎まちおこしの会」を設立、呉服屋(藤友呉服店)さんが無償で提供してくれたこの場所(2014 年改修「街かどサロンかめとも」)をコミュニティの拠点として運営している。
・同プロジェクトでは以下の5つの事業を行っている。
①現状把握調査事業 ②移住・創業支援事業 ③空家・空店舗の情報発信事業
④亀崎リノベーションスクール事業 ⑤空家・空店舗にさせない対策の発掘と発信事業
・所有者・借主の募集から現状の把握、改修設計・工事、賃貸契約、運営のサポートまで、空家再生の工程に最初から最後まで関わる。
・まとめ
①すべてを資源として評価 〜問題点は裏返せば資源
②小さく動き出してみる 〜迅速な初動、方向転換が容易
③改修を目的化しない 〜改修はもっともお金と労力が要る
④成功はまだわからない 〜活動を持続することが大切。行動は誰かの行動を生む。

(3)空家利活用実例見学
 ↓せこ(狭い路地)と再整備された井戸    ↓蕎麦屋に蘇った 100年町家 せこ(狭い路地)と再整備された井戸 蕎麦屋に蘇った 100年町家

↓建築系研究室設計コンペによる三軒長屋の改修   ↓丘からのロケーションが素晴らしい
建築系研究室設計コンペによる三軒長屋の改修 丘からのロケーションが素晴らしい

(4)質疑応答
(助成金を得るには?)
・初めから助成金目当てで活動したわけではなく、自分たちが出来ることを小さく積み重ね、結果として補助をいただくことが出来た。
(若者を巻き込むには?)
・石川さんや松下さんなど、地元のみんなに信頼されている方が組織に居て、若者が地域に入り込む際にとても敷居が低い。他の地域のように頭から否定されることはなく、のびのび活動させてくれる。
・小さなビジネスを起こし易い環境。子どもと地域を結びつけて移住を促進させること目指し、塾を開いた。半年間利用がゼロだったが、利用する学生も増え目的を果たすことが出来た。
(若者はどこから?)
・地元の若者はもちろん、ここを気に入った若者も受け入れている。
・市川様は建築家としてどういう建築が必要とされているのか知りたいと思い、このプロジェクトに参加。結果として町家や亀崎公園の再生に関わることが出来たとのこと。

□行動すると見えてくるものがある。小さな行動から始める
 参加者の多くから「実際に体験する学び」について好評を得られた。移動中も大部分の時間を意見交換に充て、参加者の生の声をたくさん聞くことができた。見習いたい取り組みには、「人間味のある行動」・「地域の特色を活かす」が散りばめられており、座学では得られない視察研修となった。アンケート結果は全内容を資料編に用意した。